『バッド・ルーテナント』 [dvd]
原題:
Bad Lieutenant: Port of Call New Orleans
監督:
ベルナー・ヘルツォーク
製作:
スティーブン・ベラフォンテ、アラン・ポルスキー、ケイブ・ポルスキー、ジョン・トンプソン、エドワード・R・プレスマン
製作総指揮:
アビ・ラーナー、ダニー・ディムボート、トレバー・ショート、ボアズ・デビッドソン、エリオット・ルイス・ローゼンブラット、アレッサンドロ・ケイモン
脚本:
ウィリアム・フィンケルスタイン
音楽:
マーク・アイシャム
出演:
ニコラス・ケイジ、エバ・メンデス、バル・キルマー
製作国:
2009年アメリカ映画
上映時間:
122分
配給:
プレシディオ
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本作でのニコラス・ケイジの役柄は悪徳刑事。あれ? どこかで見たようなシチュエーションだな…。本作でもカジノが舞台のシーンがあるのはもはや偶然とは思えない。悪徳警官役というのも同じだし。ちなみに「バッド・ルーテナント」は直訳すれば悪徳警部補という意味だ。
周知のように本作もリメイク作品であり、リメイク元は同じタイトルでハーヴェイ・カイテル主演の『バッド・ルーテナント』だ。監督のヴェルナー・ヘルツォークという人も名前くらいは知っていたが今回が初見。ニュー・ジャーマン・シネマの重鎮らしいが、本作ではリメイク元をどう料理するのか。
内容紹介
この男、正気か狂気か。
荒廃した街 ニューオリンズ。最悪な男が、躍動する。
ハリケーン・カトリーナが襲来した直後のニューオリンズ。逃げ遅れた囚人を救い出したことで表彰され、昇進を成し遂げた正義の刑事テレンス・マクドノー(ニコラス・ケイジ)。
しかし彼は賭博に興じ、恋人の高級娼婦フランキー(エヴァ・メンデス)と共にドラッグに手を染め、挙げ句の果てには警察が押収したドラッグを盗み出すという裏の顔を持っていた。ある日、不法移民の一家5人が惨殺されるという事件が起こる。テレンスはこの事件の陣頭指揮を執ることになるが、事態は思わぬ方向へと転がっていく。
といった勇ましい内容紹介ではあるが、物語自体は、悪徳刑事ものの映画の形式から大きくはみ出すものはない。悪徳刑事が徐々にのっぴきならない状況に追い込まれていくことがサスペンスを醸成する。そのサスペンス自体は、やっぱりありがちなものと言わざるをえない。
そんな本作での最大の見所はニコラス・ケイジの怪演。物語が進むに連れ酷くなっていく薬物依存のため顔色は青白くなり言動もおかしな様子になっていく。この手の追いつめられた男の狂気をギャグすれすれの演技でみせるのだからすごい。主人公をフィーチャーすることが監督の最大の目論見かとも思えるように、エヴァ・メンデスやヴァル・キルマーの出番は少しばかり冴えない。
そりゃなんでもそういうことになるのか、という結末まで含め刑事もののエンタテインメントと言うよりは、追いつめられていく男の狂気を描くことがテーマだといえる。でも、人間ドラマというカテゴリには入れられないなあ。見張り最中にイグアナの幻覚を視たりする刑事だし。今年の二月に恵比寿ガーデンシネマで上映したらしいが、観客層は合っていないように思える。
ところで、冒頭で主人公は水没した警察署に収監されていた容疑者を救い出す。その後、シーンが変わりレントゲン写真を見る医者。どうやら主人公は腰を痛めたらしいのだが、この救出劇が原因かどうかよくわからない。その後、ドラッグに依存していくのはその腰痛の痛み止めの意図からだったのだろうか。そこらへんからよくわからない。そういう解釈でいいんだろーか。