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水野和夫:『資本主義の終焉と歴史の危機』(集英社) [book]


資本主義の終焉と歴史の危機 (集英社新書)

資本主義の終焉と歴史の危機 (集英社新書)

  • 作者: 水野 和夫
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2014/03/14
  • メディア: 新書


今週の10日に著者の講演会に行く予定。そのための予習として本書を手に取る。薄手の新書なのであっという間に読めてしまった。
内容(「BOOK」データベースより)
資本主義の最終局面にいち早く立つ日本。世界史上、極めて稀な長期にわたるゼロ金利が示すものは、資本を投資しても利潤の出ない資本主義の「死」だ。他の先進国でも日本化は進み、近代を支えてきた資本主義というシステムが音を立てて崩れようとしている。一六世紀以来、世界を規定してきた資本主義というシステムがついに終焉に向かい、混沌をきわめていく「歴史の危機」。世界経済だけでなく、国民国家をも解体させる大転換期に我々は立っている。五〇〇年ぶりのこの大転換期に日本がなすべきことは? 異常な利子率の低下という「負の条件」をプラスに転換し、新たなシステムを構築するための画期的な書!
本書を乱暴に要約してしまうと、資本主義社会における「成長」は地理的に拡大することで新しい供給元や需要先を見つけることで可能だった。しかし、グローバリゼーションが進み新たなフロンティアがなくなった今、「成長」は困難になっている。それを覚った米国は「成長」を金融市場に求め、一時はそれを謳歌するも、結果としてはリーマンショックを招来する羽目になった。

新たなフロンティアはなく、金融市場にもバブル崩壊というリスクがある以上、資本主義における「成長戦略」は無理筋である。資本主義に代わる新たな仕組みを考え出す局面にある。といったところか。

その論旨には当方も同意できる。先日観た『マネーショート』に印象的なシーンがあった。金融派生商品を説明するものだ。ブラックジャックで賭けている二人を見る人が、どちらが勝つかを賭ける。さらに、その賭けをしている人のどちらが勝つかを…。と、ちょっと理解が違うかもしれないけれど無限連鎖講みたいなもので、誰が最後にババを引くかということである。無限の成長には、無限のカモが必要、と乱暴に言ってしまおう。

平たく言うと、著者は新たな「周辺」がない現在、資本主義による「成長」は無限に続かない、ということを言っているのだ。ではどうしたらいいか。そのことについて、著者もまた明確な解答は持っていない。そりゃあ、何百年も続いているシステムの後釜を個人が想像/創造できるはずがない。

当方個人としては、少なくとも「成長」が不可能となった社会でどのようにサバイバルするか、少しづつ夢想していくしかない、と思っている。


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コメント 2

ナナ

自分は経済うんぬんについては全く明るくないのですが、コメントを拝読しまして興味を持ちました。
人間が作ったモノやシステムは人間の力でなんとでも変えられると(時間はかかるかもしれないけど)思っちゃいます。
未だ誰も思いついていないアイディアがきっとあるんじゃないかしら。

by ナナ (2016-03-09 20:06) 

地蔵

ナナさん

ナナさん

コメントありがとうございます。

当方は昔はよかったなあ、という懐古趣味はなく
現代が一番暮らしやすい時代だと思っています。

まずは当事者たる我々がこういった時代である
ことを認識したうえで、よりよい道を探すほか
ないのかもしれません。
おっしゃる通り、まだアイデアはあるでしょうし
それを考え出せるものと思っています。
by 地蔵 (2016-03-09 21:29) 

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