フランク・ハーバート:『デューン 砂の惑星〔新訳版〕 中』(早川書房) [book]
内容紹介
ハルコンネン男爵の策謀により、アトレイデス公爵は不慮の死をとげ、再度アラキスは男爵の手に落ちてしまう。公爵の世継ぎポールは、巨大な砂蟲が跋扈する危険な砂漠へ母ジェシカとともに逃れ、砂漠の民フレメンの中に身を隠すことになる。しかしこの過酷な環境と香料メランジの大量摂取が、時間と空間を果てしなく見通す超常能力をポールにもたらした。彼はフレメンの伝説の救世主、ムアッディブとして歩みだすことに!
さて中巻である。中世絵巻物的に展開した上巻に比し、中巻はジェシカとポールの砂漠脱出行を中心に展開する。この冒険小説的展開は、意外によくできている。また異種族であるフレメンとその文化の細部にわたる設定やアラキスの生態環境の設定など、当時のSF小説にはみられないものだったに違いない。
砂漠における母子のサバイバルシーンは、なかなかに冒険小説しておりリーダビリティが高い。実際、上巻に費やした時間の半分ほどで読み切れる。大きな意味でのクロスジャンルノベルの先駆けだったのかもしれない。小道具の設定なども見事だ。
一方で、わりとあっさりポールが超常能力を得るところなど、ご都合主義的な展開もある。このあたりは下巻末に収録されている水鏡子氏の解説に大いにうなづける。
繰り返しになってしまうけど、当時としては新しいタイプのSF小説だったろう。生態学や文化人類学などの学問的知見や冒険小説的側面、神秘主義的なヴィジョンなども含めて。
それでは、下巻を手に取ることにしよう。
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