幸村誠:『プラネテス』(講談社) [ebook]
この季節は出かけるのが億劫になるので、土曜日は休養も兼ね一日部屋でのんびりすることが多い。洗濯や掃除を済ませてコーヒーを飲んでいると、そういえばeBookJapanで購入した本作をまだ読んでいなかったことに気づく。
SONYのタブレット端末でダウンロード状況をあらわすプログレスバーが伸長していくのを見ると、デジタルデバイスの液晶画面でコミックを読むようになるなんて、いつのまにか未来に生きているんだな、と不思議な感慨に襲われる。
そのくせ、煎餅布団に寝ていたり相変わらず朝食はチーズトーストと目玉焼きだったりするところは昭和のころの少年時代(当方にも少年時代はあったのだ!)と変わらない。劇的には変化しない。未来は少しずつ・いつのまにか変わっていくということなんだな、と思う。
出版社/著者からの内容紹介
SFニュースタンダード登場!!
400万年を経て人は地上より飛び立った
この宙(そら)は人の強さを試す
と、惹句にあるようなSFっぽさを期待すると少し違うと思う。宇宙空間を舞台にした人間ドラマ、あるいはビルドゥングス・ロマンといった風情か。いちばん最初のエピソードで、一話完結タイプの人情話かと思いきや、途中から作者のイマジネーションが膨らんだろうな。
したがって、全四巻のマンガという構成にしてはバランスが悪い。あきらかに破綻していると思うぞ。そもそもが、2ちゃんまとめサイトで「5巻ぐらいで完結するおもしろいマンガはないか」というエントリで発見したものだけど、これは完結しているのか、と思わせるくらいのもの。
でもね、なぜかそれが不快ではないのだ。それは、作者のスタンスが、いろいろひっくるめて人間っていいもんじゃないか、と言っているように思えるから。人間のいろいろな感情がぶっこまれていて、読むものはそこに自分と同じような想いがみつけられるにちがいない。作中で引用されている宮沢賢治の詩が読みたくなる、そんな作品だった。
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