石持浅海:『ブック・ジャングル』(文藝春秋) [book]
内容紹介
4月の夜、市立綾北図書館が戦場と化す。閉館される思い出の場所を、友人とともに見納めにきた昆虫学者の卵・沖野国明。そこで女子高生・百合香と友達の3人組に出会う。やがて不気味なモーター音が鳴り響く。フィールドワーク体験を生かし、虫捕りの要領で毒針ラジコンヘリをかわしていく沖野。姿を見せぬ襲撃者の目的は何なのか。閉鎖状況に追い込まれた人間達の心理を描いて秀逸な書き手が、「真夜中の図書館」という閉鎖空間に挑戦します。
著者が会社員と二足の草鞋を履く兼業作家ということは周知のことだが、本書に関して文藝春秋社のサイトにエッセイが掲載されていたのでリンクしておこう。
◆兼業作家と取材
http://hon.bunshun.jp/articles/-/22
上記を読むと、著者が「冒険小説」を志向して本書を執筆したことが伺える。そのような志向があったが故か、著者お得意の登場人物たちのディスカッションが、従来までの作品の中で最も薄くなっている。それをどのように感じるかは人それぞれだろうが、当方には物足りなく思えた。
ストーリーで言えば、首謀者がわりと早めに読者にわかってしまう。冒険小説という捉え方をすればそれはそれでかまわないのだが、本書では全体のサスペンスを減殺しているように感じられる。
有体に言えば、著者の持ち味が発揮されていない作品ということ。もちろん、つまらないということはないし読んで損したということはないのだが。
2011-10-09 12:17
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