SSブログ

香納諒一:『噛む犬 K・S・P』(徳間書店) [book]

噛む犬 K・S・P

噛む犬 K・S・P

  • 作者: 香納諒一
  • 出版社/メーカー: 徳間書店
  • 発売日: 2011/01/15
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)

四十路を過ぎてからの短期記憶の衰えについては驚くべきものがある。朝、シャワーを浴びようとしてガスの元栓をオンした後に、風呂場で「あれ? 元栓、オンしたっけ?」と、素っ裸で部屋をうろつくのが日常になってきている。ほとんど病気である。

したがって、読書についてもシリーズものにはおいそれと手が出せない。もちろん、前巻のあらすじなんてさっぱり忘れてしまうからだ。いっそ清清しいくらいの忘れっぷりである。そのくせ、学生時代に読んだものは存外に忘れていなかったりする。年をとるというのはこういうことなんだね。


内容(「BOOK」データベースより)
新宿副都心の高層ビル群の一角に沖幹次郎、村井貴理子らK・S・P特捜部が駆けつける。植え込みから白骨死体が見つかったのだ。身元は警視庁捜査二課の溝端悠衣警部補。貴理子が敬意を寄せる先輩だった。死亡前の動向を探ると、未解決の轢き逃げ事件を単独捜査していた形跡が浮上。被害者は暴力団組員で、溝端は保険金の受取人である婚約者とも接触していた。彼女が突き止めようとしていたものとは?やがて警察組織と政財界の闇が口を開く―。

さて、本書は周知のように「K・S・P(歌舞伎町特別分署:Kabukicho Special Precinct)」シリーズの最新刊。主人公の沖幹次郎を中心とした警察官たちの活躍を描いている。これまで、ヤクザ/チャイニーズマフィア/警察の三つ巴の闘いを描いてきたのと異なり、三巻目はシリーズの中でも間奏曲といった内容となっている。

当然のことながらストーリーはゆるやかに関連している部分があるのだが、2008年の9月に読んでいた前作の内容をほぼすべて忘れてしまっているので往生した。読み返そうにも自宅においてあるのでそうもいかない。もうシリーズものにはおいそれと手(以下略

閑話休題。最近の著者の作品と同様に、複雑なプロットを登場人物たちの科白で補足説明するという書き方は正直なところ好きになれない。せっかくのストーリーテラーがもったいない、という感じだ。

あと、冒頭に女刑事が白骨死体で発見されるのだが、捜査につれて浮かび上がる彼女の肖像がストーリーの核になってくるかと思いきや、そのあたりがあっさりしていて物足りない。人間を描くということで言えば、出家した元ヤクザの組長に著者の興味が移っていったようだ。

それでもね、やはりヒリヒリするような雰囲気とか臨場感や、著者の作品では珍しい主人公・沖の強烈なキャラクタなどで読ませることには間違いない。繰り返しになるが、シリーズの幕間といった位置付けの作品なので、次作では壮大なフィナーレが用意されている予感がする。期待したい。


nice!(1)  コメント(1)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

nice! 1

コメント 1

般若坊

もの忘れもいいものですよ!私も書棚の本の内容をすっかり忘れていますので、再読が出来ますね!健忘症万歳!
by 般若坊 (2011-10-08 12:55) 

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。