玄田有史:『希望のつくり方』(岩波書店) [book]
著者の本を初めて読んだのは『 仕事のなかの曖昧な不安 』だった。同書に深く感銘を受けたこともあり、ネットで著者を検索していたら、なんというシンクロニシティ、数日後に講演会があるではないか。応募メールを検索してみたら、2003年の4月に開催されていた。
当時の職場に程近い中央大学駿河台記念館の680号室で開催されたそれは、著者が『 ニート―フリーターでもなく失業者でもなく 』を出版する前で、マスコミにもそれほど名が知られていなかったためか、数十人規模のこじんまりとしたものだった。
講演会の内容は、『仕事のなかの~』の主張を基にしたものだから新味はなかったように記憶している。ただ、出席者数が少数だったからだろうか、玄田氏が参加者に質問をしてそれに答えるという学校の授業のような形式だったのが印象的だった。
実は当方も同氏に質問された。「今現在の失業率は?」というものだった。たまたま、その数値を知っていたので答えることができた。いやあ、それでもどきどきしたよなあ。
内容(「BOOK」データベースより)
希望は与えられるものではない、自分たちの手で見つけるものだ。でも、どうやって?著者が出会った、さまざまな声のなかに、国の、地域の、会社の、そして個人の閉塞した現状をのり越えて、希望をつくり出すヒントをさがしていく。「希望学」の成果を活かし、未来へと生きるすべての人たちに放つ、しなやかなメッセージ。
本作についても、著者の主張は一貫している。悪く言えばワンパターンだ。「ウィーク・タイズ」というタームや、「人間、壁にぶち当たったらどうするか」という問いに対する解も同一。
で、当方はその一貫している主張が心地よく思えるのだ。とにもかくにも、自分の言いたいことを少しでも人口に膾炙させたいという著者の思いが伝わってくるということだ。本書のテーマとなっている「希望学」についても、『仕事のなかの~』から連綿と続いている主張が昇華されたものと理解している。
その「熱さ」をどのように捉えるかによって評価は変わってくるかと思うのだが、当方は単純に好きなので、本書もお奨めできる一冊といえる。
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