高田郁:『今朝の春―みをつくし料理帖』(角川春樹事務所) [book]
今朝の春―みをつくし料理帖 (ハルキ文庫 た 19-4 時代小説文庫)
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出版社紹介文より
月に三度の『三方よしの日』、つる家では澪と助っ人の又次が作る料理が評判を呼び、繁盛していた。そんなある日、伊勢屋の美緒に大奥奉公の話が持ち上がり、澪は包丁使いの指南役を任されて――(第一話『花嫁御寮』)。他、三話。
しばらくほっぽらかしにしておいた本書をふと手に取ったのは夕方だったのだが、途中で止められずに読み終わったのは夜中となってしまった。おもしろさは相変わらずで、配偶者も好きなシリーズ。そのおもしろさには、特に贅言を尽くす必要はないと思う。未読の人は騙されたと思って読んで欲しいとしか言いようがない。
というだけでは味気ないというか自身のおぼえがきにもならないので、本シリーズのおもしろさについてつらつらと考えたのだが、ひとつ思いついたことがある。
- 主人公が特殊な才能や技術を持っていること。そして、それが主人公が困難に立ち向かうに際し有効であること。本シリーズで言えば、料理の才能だね。
- シリーズを貫く大きなストーリーがあること。それは、かつての主の出奔してしまった息子捜しであったり、簡単には会えない幼馴染みとの交流であったりとか。
- 主人公と個性的な登場人物たちの巻き起こす事件のエピソードが語られること。
- そして意外に重要なのは、基本的に一話完結の連作であること。
それでもね、本シリーズが海ドラと異なるのは基本的に主人公の成長物語であることだ。上記のような枠組みを時代劇というジャンルに上手に取り入れたうえで、成長物語という骨太な物語を語ることに、本シリーズのおもしろみがあるのだ、と、そんな気がするのであった。
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