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東川篤哉:『もう誘拐なんてしない』(文藝春秋) [ebook]

もう誘拐なんてしない (文春文庫)

もう誘拐なんてしない (文春文庫)

  • 作者: 東川 篤哉
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2010/07/09
  • メディア: 文庫

山口県に旅行に行ったことがある。ほぼ何の予備知識もなく、だ。秋芳洞・萩と周り、翌日はとりあえず福岡に渡ると言う程度の予定で動いた。宿泊後の朝、新山口駅から電車に乗り発作的に下関で下車したのは、確か水族館があるとわかったからだった。

そして、そのとき初めて知ったのが「厳流島」が下関にあると言うことだった。いや、まったく以て恥ずかしい限りだ。もちろん島には渡航し、他にも唐戸市場で寿司などを食した後、船にて関門海峡を渡ったのだった。後で知って悔やんだのは関門トンネルがどうやら徒歩でも通行できるらしいということ。うーむ、歩いておけば良かったなあ。

なんでそんな話をしているかというと、本書が下関と門司を舞台にしているから。同地には上記のような思い出があるから、なんとなくね、懐かしさを覚えたのだった


内容(「BOOK」データベースより)
大学の夏休み、先輩の手伝いで福岡県の門司でたこ焼き屋台のバイトをしていた樽井翔太郎は、ひょんなことからセーラー服の美少女、花園絵里香をヤクザ二人組から助け出してしまう。もしかして、これは恋の始まり!? いえいえ彼女は組長の娘。関門海峡を舞台に繰り広げられる青春コメディ&本格ミステリの傑作。

都合4冊目の電子書籍での読了作品はユーモアミステリ(ギャグミステリ?)とあいなる。狂言誘拐というテーマを著者がどのように料理するかを期待しながら読む。基本的にはライトノベルタッチ(あまり読んだことはないが)のキャラクタやプロットといえる。だから、人は死なないのかなと読み進めていくと、いきなり主要登場人物が殺人事件に遭遇したりする。

一方で、狂言誘拐の片棒を担ぐことになった主人公の青年はあくまで脳天気で、殺人も含めたかなり深刻な状況に巻き込まれているにも関わらず、最後までオフビートだったりするのがリアリティを云々する以前に不条理小説っぽい印象だ。読了すると、そのチグハグさに今一つ納得がいかないと言うことは正直に申し上げたい。もちろん、本書は一種のファンタシィであって、そういったリアリティを求めるべきものではないのだが。

それでもね、読んでいる間の愉しさは充分にあった言えるし、ページを捲る液晶画面を擦る手はなかなか止められないストーリーテリングもある。著者の作品はまだ2作しか読んだことはないが、ギャグのキレはこれまででもっとも良かった。ミステリに鹿爪らしいものを求めないタイプの読者にはお奨めして問題ないかな、と思ったのだった。


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