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牧野武文:『ゲームの父・横井軍平伝』(角川書店) [book]

ゲームの父・横井軍平伝  任天堂のDNAを創造した男

ゲームの父・横井軍平伝 任天堂のDNAを創造した男

  • 作者: 牧野 武文
  • 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
  • 発売日: 2010/06/11
  • メディア: 単行本

実に久々のエントリだ。ここまでサボったのは初めてかもしれない。サボりの理由は、ひとつには気分の問題。青空がのぞかない日々における季節性鬱が考えられる。もうひとつは、Xbox 360のゲームにはまっているということ(ぜんぜん季節性鬱じゃないな)。『 ラスト レムナント 』というロール・プレイング・ゲーム(以下RPG)なんだが、これがおもしろい。

RPGは学生時代にやった『ドラゴンクエスト2』以来で、20年以上前のことだ。20世紀以来やっていなかったRPGを現代のソフトでプレイすると、もう浦島太郎状態である。おどろいたね。ここまで3Dグラフィックが華麗なものになっているとは思ってもいなかった。イベント部分なんてまるで映画のようじゃないか。

今のところ、まだDisk1さえも終わっていないので、クリア後に総合的な評価はエントリしたいと思っている。ただね、プレイしながら少しばかり違和感を持ったことも告白しておこう。ひとつには、RPGが21世紀になっても「剣と魔法の物語」であり続けているということ。もちろん、プレイヤーを非現実の世界に持って行きやすい装置ではあるんだろうが。

もうひとつは、ファミコン時代の「ドラゴンクエスト」と本質は変わらない探求の物語であること。どんなに華麗な3DCGで飾り立ててあろうとも、だ。そして、得られる本質的なエモーションは、動作周波数1.79MhzのCPUで駆動したファミコンと同3.2Ghz駆動のXbox 360とで、それほど変わらないのじゃないか、と思ってしまったりするのだ


内容紹介
ゲームボーイ、ゲーム&ウオッチ、光線銃、ウルトラマシン、ウルトラハンド・・・これらの玩具はすべて、任天堂の伝説的開発者、横井軍平の発案によるものだった! 横井の発想哲学「枯れた技術の水平思考」とは?

本書は、前述の読書欲減退期にある背景とは無関係に購入し積ん読状態であったのだが、この時期に本の山のなかから抜き出したということではちょっとしたシンクロニシティとはいえる。

まず巻頭には、横井氏が中心となって開発した玩具やゲームの写真が掲載されている。当方の前後の世代にはその多くを見知ったものであることに少しおどろく。ウルトラハンドウルトラマシーンなんて懐かしいね(持ってはいなかったが)。なかでもゲームウォッチは当方でさえも買ってもらったことのあるゲーム機で、それを横井氏が中心となって開発していたわけだ。

著者はまず冒頭で、横井氏の「枯れた技術の水平思考」という言葉を紹介する。 詳しくはリンク先を読んでもらうとして、ここでは「安く作らないと売れないというのはアイディアの不足なんです」という氏の言葉を紹介しておこう。

入社後に、暇つぶしの手すさびで作ったウルトラハンドが社長の目にとまり商品化されたことや、社長直属の開発部に配属後、枯れた技術を独自の発想で商品化していく横井氏の活躍が記述されていく。オイルショックの余波で失敗した事業の失地挽回となったゲームウォッチ開発エピソードなどすべてが興味深い。

で、実は当方が感嘆したのは「枯れた技術の水平思考」という氏の開発哲学の根源にある、遊びの本質を見抜く目だった。ゲームボーイも氏の開発した商品だったが、コスト面や電池の保ちからモノクロ液晶を採用した。そしてそれ以上に、カラー液晶は氏にとって遊びの本質ではないということも意味していた。


私はいつも「試しにモノクロで雪だるまを描いてごらん」と言うんです。黒で描いても、雪だるまは白く見えるんですね。リンゴはちゃんとモノクロでも赤く見える。
(143ページ)
 

どんなに技術が先鋭化してCPUが高速になりリッチコンテンツが提供されようとも、人々が楽しむためにはその遊びの本質が揺るぎないものでなくてはならない、と当方は読んだ。そして実際、任天堂のホームページや社長インタビューを読むと、氏の思想は本書サブタイトルにある同社の「DNA」として受け継がれている思う。そのあたりは下記をご参照。

■後藤弘茂のWeekly海外ニュース■
任天堂 岩田聡社長インタビュー(1)マンマシンインターフェイスを直感的にすることがカギ
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2006/1206/kaigai324.htm

社長が訊く Wii プロジェクト - Vol.1 Wii ハード編
http://www.nintendo.co.jp/wii/topics/interview/vol1/index.html


本書を読むと、横井軍平氏が人間の創造力/想像力を信頼し愛してきた人物として感じられる。世の中にはすごい人物がいたんだと嘆息させてくれる一冊。おすすめ。


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