『マイレージ、マイライフ』 [movie]
原題:
Up in the Air
監督:
ジェイソン・ライトマン
製作:
アイバン・ライトマン、ジェイソン・ライトマン、ダニエル・ダビッキ、ジェフリー・クリフォード
原作:
ウォルター・キム
脚本:
ジェイソン・ライトマン、シェルダン・ターナー
出演
ジョージ・クルーニー、ベラ・ファーミガ、アナ・ケンドリック、ジェイソン・ベイトマン、エイミー・モートン、メラニー・リンスキー、J・K・シモンズ、サム・エリオット、ダニー・マクブライド
製作国:
2009 年アメリカ映画
上映時間:
109分
配給:
パラマウント
ストーリー
リストラ請負人のライアンは、飛行機で全米を飛び回り、リストラ対象者に次々クビを言い渡す日々。出張の副産物・航空会社のマイレージも貯まる一方で、彼はいつしか1000万マイル獲得を目標に定め今日も前向きに機上の人となる。ところがある日、コスト削減のため出張は一切禁止という命令が下り、彼の野望に暗雲がたれこめる。
本作の監督であるジェイソン・ライトマンの作品を鑑賞するのは『 JUNO/ジュノ 』と『 サンキュー・スモーキング 』に続いて3作目。前2作はつまらなくはなかったにせよ、今ひとつノリ切れなかったというのが正直なところだった。そんなわけで本作もさして期待せずに鑑賞に赴いたところうれしい誤算、意外といけるじゃないですか。
いつもならクールでかっこいい役所のジョージ・クルーニーが、少し疲れた・ある種冴えない・ある種空気を読めないライアン・ビンガムを演じている。いや、もちろん、かっこいいんだけどさ。そんな彼は年間322日を出張するリストラ請負人。ところが新入社員のナタリー(アナ・ケンドリック)がネットTV電話活用によるリストラ宣告を提案する…。
中盤までは、生身での宣告に意義を見いだすビンガムとナタリーとの出張珍道中だが、合間には出張先で出会ったキャリア・ウーマンのアレックス(ヴェラ・ファーミガ)との恋模様などを織り交ぜつつ物語は進む。
かくのごとく、ストーリーにそれほど瞠目すべき点はない。おもしろみは、ライアン・ビンガムという男の個性にある。人との深いつきあいは避け、家やモノの所有を忌避し、独身で子どももいない。そんな彼のたった一つの目標はマイレージを1000万マイル貯めること。
当然のことながら、最終的にどのように彼が変わっていくのか、というのが本作の見所。実は、ラストシーンを観ての解釈は人それぞれ異なるに違いない。ただ、いえるのは変化の予感を感じさせるシーンが随所にあるところ。たとえば、妹の結婚式の当日に結婚をやめたいと言い出した婚約者に対しビンガムは説得に向かう。
結果として翻意させたビンガムに、彼の姉は家族に対し幽霊のような存在だった彼に"Welcome home"と声をかける。字幕では「やっと家族の一員ね」というような訳だったが、ここではやはり「おかえりなさい」なのだろう。
そう、本作ではありふれているがゆえに誰もが抱える思い、「仕事とはなにか」、「家族とはなにか」、「恋愛とは」、「孤独とは」…etc いろいろなテーマが重層的になっている映画といえる。そして、それらのことって結局、「生きるとはどういうことか」というテーマに収斂されていくわけだ。
いや、まあ、大袈裟に考え過ぎか。それでも、鑑賞する人によって様々なテーマを見いだせるという意味で存外に奥が深い映画だとはいえる。そしてなにかが不思議と心に響くのだ。劇場公開はほぼ終わりに近づいているので、気になる人はDVDでどうぞ、と、控えめにお奨めしたい佳作。
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