石持浅海:『セリヌンティウスの舟』(光文社) [book]
配偶者が所有していたので借りて読む。基本的に読書の傾向はダブらないのだが、著者だけは珍しい例外。どうやら当方よりも先に著者の作品のおもしろさを発見していたようだ。
内容(「BOOK」データベースより)
大時化の海の遭難事故によって、信頼の強い絆で結ばれた六人の仲間。そのなかの一人、米村美月が、青酸カリを呷って自殺した。遺された五人は、彼女の自殺に不自然な点を見つけ、美月の死に隠された謎について、推理を始める。お互いを信じること、信じ抜くことを、たったひとつのルールとして―。メロスの友の懊悩を描く、美しき「本格」の論理。
本書を読み終えると残りは、『 顔のない敵 』、『 人柱はミイラと出会う 』そして『 リスの窒息 』を残すのみ。いずれも購入済みだが、勿体ないので中毒症状が出始めたら読むことにしよう。
さて、本書については正直なところあまり期待しないで読み始めた。というのも、Amazonのカスタマーズレビューで高得点でなかったことや、題材がちょっと地味なんじゃないの、という理由からだった。が、それはまさに杞憂だったようだ。
まあ、一般的には怪体な小説といえるだろう。仲間の自殺の不審な点を解き明かしていくディスカッションを延々と続けていくのだから。おそらくは小説内時間で3時間程度くらいだろう。近年のミステリとしては短尺なほうだが、とにかく、ここまでディスカッションによる推理に特化した小説は珍しいのではないかと思う。
そして、著者のエッセンスが凝縮された小説であるとも感じた。平凡なサラリーマンながら知力に優れた登場人物たち・どこかずれた倫理観・特異な状況下における人間の行動などなど。ザ・石持浅海、みたいな小説。
ストーリーが地味そうという予断で読むのが後回しになってしまっていたことが悔やまれる。もちろん、著者のファンは既読だろうが、当方と同じような感覚で食わず嫌いになっている人がいるならば、そこはかとなくお奨めしておこう。
◎関連エントリ
・石持浅海:『賢者の贈り物』(PHP研究所)
・石持浅海:『扉は閉ざされたまま』(祥伝社)
・石持浅海:『水の迷宮』(光文社)
・石持浅海:『R のつく月には気をつけよう』(祥伝社)
・石持浅海:『君の望む死に方』(祥伝社)
・石持浅海:『耳をふさいで夜を走る』(徳間書店)
・石持浅海:『ガーディアン』(光文社)
・石持浅海:『温かな手』(東京創元社)
・石持浅海:『まっすぐ進め』(講談社)
・石持浅海:『BG、あるいは死せるカイニス』(東京創元社)
・石持浅海:『君がいなくても平気』(光文社)
・石持浅海:『月の扉』(光文社)
・石持浅海:『心臓と左手』(光文社)
・石持浅海:『攪乱者』(実業之日本社)
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