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佐々木俊尚:『電子書籍の衝撃』(ディスカヴァー・トゥエンティワン) [ebook]

電子書籍の衝撃 (ディスカヴァー携書)

電子書籍の衝撃 (ディスカヴァー携書)

  • 作者: 佐々木 俊尚
  • 出版社/メーカー: ディスカヴァー・トゥエンティワン
  • 発売日: 2010/04/15
  • メディア: 新書


いま評判のブログに「たぬきちの「リストラなう」日記」がある。読んでいると、どこの会社でもたいへんなんだな、ということがわかる。そして少し変わっているのは、書き手が大手の出版社に勤めているということ。そのへんの内情も仄見えたりする。

本が好きで出版業界にある程度くわしい人なら、その出版社が、遠野あたりに住み着くキュウリが好きな想像上の妖怪をトレードマークにしている会社だということは推測できよう(実際にそうなのかはわからないが)。


内容(「BOOK」データベースより)
『2011年 新聞・テレビ消滅』!? では、本はどうなる!? キンドルに続き、アップルiPad登場。それは、本の世界の何を変えるのか?電子書籍先進国アメリカの現況から、日本の現在の出版流通の課題まで、気鋭のジャーナリストが今を斬り、未来を描く。


本書は冒頭のリンクをクリックしていただければおわかりのように未発売の書籍だ。なんで発売前なのにエントリしてるいるのかといえば、発売前のキャンペーン価格で110円で販売されている電子書籍を購入したからだ。

そして、初めての電子書籍はどうだったのか、というのが本エントリの主題だ。その意義や衝撃については、前述のたぬきちさんのエントリをお読みになっていただきたい。

まず、本書を読むには株式会社ボイジャー社の"T-Time"というソフトが必要になってくる。対応OSはWin,Mac,Pocket PC,そして懐かしやPalm OSだ。くわしくは同社のサイトにて確認してほしい。

当方はWindows版をインストールすることにした。 インターフェースはシンプルで、起動には少しばかりもたつくかなという感覚はあるが特に問題なし。気になったのはノンブルがなく、自分がどのあたりのページを読んでいるのかわからないこと。いや、よく調べれば表示機能はあるのかもしれないが。

ノンブルに代わるものとして、表示画面の下方にインジケータがあり、それにより今どのあたりを読んでいるのかを確認することができる。言葉ではうまく表現できないのでスクリーンショットを撮ろうかと思ったら、おそらく著作権保護機能のためだろう、それはできなかった。

本書に関して言えば、横書きでレイアウトされていて、それ自体に読みにくさがなかったのは意外だ。12インチXGAのノートPCの画面で読む限りでは文字は小さいとは思わなかった。このあたりは、手持ちのPocket PCでWVGA画面での快適性はどうか確認せねばなるまい。

そう、少なくとも当方は当初に感じていたほど、PCの画面で本を読むという行為に違和感を感じなかった。わかりやすく言うと、内田樹氏のブログや小田嶋隆のコラムをweb上で読むのとそうかわりないということだ。

そこには、改行の間隔とか文字の大きさ・稠密性なども関わってくるだろうから技術的な問題ともいえるだろう。実はいちばんのファクターはリーダビリティということかもしれない。いかにサクサク読める文章か、ということだ。そういう意味では本書の著者の文章は読みやすくわかりやすい。

たとえば、非常に難解な海外文学を電子書籍というフォーマットで読むかというと、当方について言えば、現段階ではないだろうといえる。そう、本書がそうであるように、新書あたりのヴォリュームや内容が電子書籍にぴったりなのではないか、という印象を持ったのだ。実際、その良否はともかく、現在の新書はコンテンポラリなテーマをわかりやすい語り口で読ませるというのがウリになっていると思うから。

もし、新書が電子書籍化され、それがリーズナブルな価格で販売されたとしたら、当方はそちらを購入するようになると思う。もちろん、一部の”本”として所有しておきたいモノをのぞいて。もちろん、それは個人的な感覚なのだが。

内容について少しは触れておかねばならないか。序盤での、米国における電子書籍の市場確保に躍起になるプレーヤーたちの争いは仄聞していたが、Amazonでは電子書籍出版をプロ・アマ問わず請け負っているという事実が興味深い。webにおけるプロ・アマのシームレス化がさらに進んでいるようだ。

そんな先進的な米国の出版事情に比べ、我が国の出版業界の旧弊さに対して著者は怒るというより呆れかえっているようだ。たとえば「本のニセ金化」なんて現象を記述しているが、普通の出版社だったらこんな文章を許さないだろうという気はする。本書の出版社は本屋さんと直接取引が主なようだから許されるんだろう。

取次(=出版販売会社,本の問屋さん)に対する批判も相当に激しく、当方の愛する山本夏彦翁の「取次には本を見る目がない」との言葉を借り、現在の出版流通の構造的課題を浮き彫りにしている。インディーズ系の出版社じゃないと、なかなかこういうこともいえないんだろう。

総じてわかりやすくおもしろいと感じたが、この本を1,150円で購入していたら、もう少し違った読後感になったかもしれない。

そんなわけで、本書の電子書籍版のキャンペーン価格は14日までのようなので、気になる人は購入してみてはいかがだろう。なにしろ、本で買ったら価格は10倍するんだから。


◎関連エントリ
 ・クリス・アンダーソン:『フリー~〈無料〉からお金を生みだす新戦略』(日本放送出版協会)
 ・内田和成:『異業種競争戦略』(日本経済新聞出版社)


◎併せて読みたい
 ・小田嶋隆のア・ピース・オブ・警句
  iPadは、本棚なきコトバダイバーたちを生む


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