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三枝匡:『V字回復の経営』日本経済新聞社 [book]

V字回復の経営―2年で会社を変えられますか (日経ビジネス人文庫)

V字回復の経営―2年で会社を変えられますか (日経ビジネス人文庫)

  • 作者: 三枝 匡
  • 出版社/メーカー: 日本経済新聞社
  • 発売日: 2006/04
  • メディア: 文庫

とある一部上場企業の代表者がお奨めしていた作品。たったいま確認したところ、その上場企業の株価は100円を切っていた。事業・企業再建というのはむずかしいんだろうな。


内容(「BOOK」データベースより)
「2年で黒字化できなければ、退任します」―。戦略的なアプローチと覚悟(高い志)を武器に不振事業再建に取り組む黒岩莞太は、社内の甘えを断ち切り、業績を回復させることができるか。実際に行われた組織変革を題材に、迫真のストーリーで企業再生のカギを説いたベストセラー。


著者はボストン・コンサルティンググループ出身のコンサルタントで、いわゆるターン・アラウンド・マネージャーだった人物。文庫版のあとがきを読むと、現在はあのミスミの会長を務めておられる。コンサルタントは会社経営なんてできないだろう、という一般的な通念では括りきれない人物のようだ。

本書の冒頭では、著者の手がけられた企業・事業再建の経験のうち五社を題材にしていると記述されているが、同じく文庫版のあとがきには、実は中心となるストーリーのほとんどが一社のものであることも記されている。それについてはこのあたりをご参照されるとよいかもしれない。

さて肝心の内容だが、一言で言うとおもしろい。基本的にはフィクション仕立てで書かれているのだが、その企業や登場人物の状況や言葉の端々における危機的予兆について、著者がコメントしている。そのコメントが辛辣ながらも的確なところが、当方にとっても身に覚えがあるので痛いのだ。

あるいは、事業再生のリーダー役として改革を推進していく登場人物の下記のような傍白は強烈だと思う。


そして私はこれまで、社内の善玉・悪玉を組織や人の単位で分けていました。しかしそれが間違いだと分かってきたのです。
つまり・・・・・・この人が善玉、あの人が悪玉、あるいは営業が善玉、開発が悪玉とかいう分類ではなく・・・・・・社員一人ひとりの中に善玉・悪玉が同居しているのです。
だから、この事業部の沈滞に対して、誰一人として「無罪の人はいない」と気づいたのです。

(217ページ)
 

正直なところ、当方も自分の勤務する企業や業界に沈滞ムードを感じることがある。そんな沈滞の生成には、ほかならぬ自分も少なからず荷担しているのではないか、と気づかされる。

細かいところでは、その再生手法に反感を感じざるをえない部分もある。ただ、そこには何が本当に大切なのか、という価値観の問題もあるわけで、個々人で感じ方も違うだろう。 単行本刊行は2001年だが、ビジネス書にありがちな時間の経過による色褪せを感じさせない、人間洞察に優れた好著だ。


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