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本多孝好:『MOMENT』(集英社) [book]

MOMENT (集英社文庫)

MOMENT (集英社文庫)

  • 作者: 本多 孝好
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2005/09/16
  • メディア: 文庫

何においても谷間というものはあるわけで、現在のところ読書欲が減退してしまっている。こういうときは何をしてもダメだから読みたくなるまでテキトーにボケーッとする。別に読まなくたって誰に咎められるわけでもないし。


内容(「BOOK」データベースより)
死ぬ前にひとつ願いが叶うとしたら…。病院でバイトをする大学生の「僕」。ある末期患者の願いを叶えた事から、彼の元には患者たちの最後の願いが寄せられるようになる。恋心、家族への愛、死に対する恐怖、そして癒えることのない深い悲しみ。願いに込められた命の真実に彼の心は揺れ動く。ひとは人生の終わりに誰を想い、何を願うのか。そこにある小さいけれど確かな希望―。静かに胸を打つ物語。


そんな谷間にあったのだが、本書は読むのを止められず深夜にまでかかって読了した作品。梗概だけ読むと感動系泣かせ小説かと思いきや、もう少し泥臭く、かつドライな連作長編小説だった。

病院で清掃のアルバイトに携わることになった主人公が、末期の患者の最期の願いを聞き届けるといううわさ話「必殺仕事人」の話を聞く。あるとき、入院患者の老女からその話を聴いた彼は...というあたりが正確な梗概だろう。

主人公はモラトリアム期間中の大学生。ハードボイルド小説の主人公並みの減らず口を叩く。このあたりの人物造形はおもしろい。主人公に"仕事"を依頼する人物たちも、何かしらの悪意、といっては言い過ぎなんだろうけど、決して綺麗事だけでは済まない意図を隠し持っている。

だから、舞台設定やストーリーから想起される涙頂戴系の物語になっていない。そんなところに好感が持てる。死にゆく人間たちだって人間には違いないし、そこには人間らしい愛憎もあるのだ、という著者の考えがあるように思える。

何度も言うが、泣ける(だけの)小説ではない。死の間際の人間心理の複雑さをテーマにした作品と読んだ。そのあたりはお間違いのないように。で、近作の『 WILL 』は本書の脇役で主人公の幼馴染みで葬儀屋である森野が中心になる物語のようだ。こちらも読んでみることにしよう。


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