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ヘレン・マクロイ:『幽霊の2/3』(東京創元社) [book]

幽霊の2/3 (創元推理文庫)

幽霊の2/3 (創元推理文庫)

  • 作者: ヘレン・マクロイ
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2009/08/30
  • メディア: 文庫

創元推理文庫が50周年とのことで誠に以って謹啓の至りである。当方が同文庫を初めて買ったのは小学生のころ、エラリー・クイーンの『 オランダ靴の謎 』だったと思う。30年近くのお付き合いというわけだ。

その後、サスペンスやらSFなども購入し、当方の本棚の同文庫の占有率はそれなりに高くなっていると思う。今後も最新の作品のみならず、隠れた名作や迷作も発掘・復刊してほしいものだ。


内容(「BOOK」データベースより)
出版社社長の邸宅で開かれたパーティーで、人気作家エイモス・コットルが、余興のゲーム“幽霊の2/3”の最中に毒物を飲んで絶命してしまう。招待客の一人、精神科医のベイジル・ウィリング博士が、関係者から事情を聞いてまわると、次々に意外な事実が明らかになる。作家を取りまく錯綜した人間関係にひそむ謎と、毒殺事件の真相は? 名のみ語り継がれてきた傑作が新訳で登場。

著者の作品はかつて短編の「燕京綺譚」を読んだか読まなかったのか、という程度。堅苦しい感じがして特に興味はなかったし、シャーロット・アームストロングとかマーガレット・ミラーとか同世代の女流作家と同じくとりたてて食指が動かなかった。

今回、手に取ったのは装丁が渋かったのでジャケ買い。あと、名のみ知られる名作というふれこみがあったから。ところが読み始めてからの展開は遅く、積読本になっちゃうかもと思っていた。おもしろくなるのは事件が起こったあたりで物語が動き始めるころから。

梗概をお読みになればわかる通り、事件自体に大きな謎があるわけではない。ある登場人物の背景に潜む謎を残された手がかりから丹念に辿る探偵の活躍が本書の醍醐味だ。

また、1956年発表作品にもかかわらず古びていないことが素晴らしい(翻訳のおかげもあるだろうが)。描かれる人間やその関係なども類型的に収まっておらず、良い意味でいやらしく書けていると思う。

終盤では本格ミステリらしい味付けもあり、単なるサスペンスで終わっていない。タイトルが二重三重の意味を持っていることなども洒落ている。重厚な作品とはいえないが、逆に巧くまとまった佳品としてお奨めできる。


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