福田栄一:『エンド・クレジットに最適な夏』(東京創元社) [book]
モジュラー型の小説、という小説形式をご存じだろうか。警察小説なんかでよく使われる形式で同時並行する事件を一人もしくは複数が解決のために奔走する、という感じ。調べるとその嚆矢はJ・J・マリックのギデオン警視シリーズのようだ。事件の中には解決されるものもあれば、未解決に終るものもあるらしい(未読)。
最近ではフロスト・シリーズなんかもそうみたいだ。アマゾンのレビューを読んで、そんなモジュラー型の小説を想定して本書を手に取る。結論から言うと、そういうものではなかったが十分に楽しめた小説だった。
【出版社 / 著者からの内容紹介】
貧乏学生の晴也のもとに持ち込まれたのは、自分を付け回す不審者を捕まえてほしいという女子大生の頼み。早速彼女の部屋で不審者が現れるのを待っていると、マンションの前の道からこちらを見上げている男の姿が。しかし男は不審者ではなく、隣に住む女性の兄だった。妹と連絡が取れなくて困っている彼の頼みを、晴也は引き受けることになり……。なぜか芋蔓式に増えてゆく厄介な難題に東奔西走気息奄々、にわかトラブルシューターとなった青年の大忙しの日々を描いた巧妙なモザイク青春小説。『A HAPPY LUCKY MAN』の俊英が贈る快作!
あらすじからはコミカルな青春小説も想像できるがそれはいい意味で裏切られた。本書はいわゆるネオ・ハードボイルド小説だと思う。なんでそう思うかはうまく説明できないけど。展開が早く構成も緻密なノンストップノベルとしてお薦めしておこう。
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