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多島斗志之:『感傷コンパス』(角川書店) [book]

感傷コンパス

感傷コンパス

  • 作者: 多島 斗志之
  • 出版社/メーカー: 角川書店
  • 発売日: 2007/08
  • メディア: 単行本

 

 

 

当方は首都圏の出身で盆暮れに帰るような、いわゆる故郷というものはない。ただ、ごくごく幼少の頃には父の故郷には何度か行ったことがある。当方にとっては故郷ではなく異郷ではあったが、魚釣りや潮干狩り・虫取りや盆踊りなど、絵に描いたような夏休みを過ごした覚えがある。今の子どもたちはそんな思い出を作れるのかどうだかはよくわからない。

さて、著者は当方の敬愛する作家の一人でデビュー作の『〈移情閣〉ゲーム』以来、ほぼリアルタイムに入手、読破してきた。寡作の人であり、(おそらく)残念ながらそう売れているわけでもないが、緻密なプロット・そこはかとないユーモアなど、日本には数少ない洒脱な作家、と思っている。

本書のタイトルは、主人公の教師である井上明子が教師として三重県の地方の山里に赴任するに当たっての贈物。内容としては『ALWAYS 三丁目の夕日』が解き放った"近過去ノスタルジック・ファンタシィ"ともいうべきもの。したがって、従来の少しひねくれた著者の作風とは一線を画している。

それにしても凄まじい破壊力だ。なにがって、当方のようにすこしでも近過去に郷愁を感じているような人間なら瞬く間に泣けます。いや、昔の教師や子どもたちがこんなにいい奴らばかりだったわけではないだろうし、田舎暮らしはそれなりの周囲からの圧力だってあるだろう。それでも冒頭に記したような、夏休みに田舎で冒険をしたような人間なら必ずや涙腺がゆるむことでしょう。中高年以上の人にお薦め。

そういえばどこかのblogで『ALWAYS 三丁目の夕日』を劇場で鑑賞していると、のっけからぽろぽろ涙を流しているおじいちゃんがいた、なんて記述を思い出しました。
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