海堂尊:『医学のたまご』(理論社) [book]
当初はタイトルといい装丁といい中高生向けの医学入門書かと思ったが純然たるフィクション。しかも日経メディカルという雑誌に連載されていたものだ。ただし、いわゆるミステリなのかというとそういうジャンルではない。
世界でも指折りのゲーム理論学者を父に持つ中学生の主人公が、あることをきっかけに大学の医学部で研究することになる。そこで象牙の塔のなかの大人の事情につきあわされるはめになる...
舞台は著者のキャッスルロックである桜ノ宮市、舞台の大学はもちろん東城大学医学部だ。とはいえいつものレギュラーメンバーの登場は少ない(ハイパーマン・バッカスはメンバーに入るか・・・)。いつも思うのだけど、舞台となる桜ノ宮市は我々の住む世界とちょっとズレてるパラレルワールドのようだ。登場人物たちもちょっと変わってるしね。
各章ごとのタイトルになっているアフォリズムがいい。当方が気に入ったのは「扉を開けたときには、勝負がついている」と、パパは言った、というもの。裏の主人公である主人公の父の名探偵振りが(浮世離れ振りも)おもしろい。本書ではもっとも立ったキャラクターだ。
いつもの海堂節が炸裂と思いきや、ほろ苦くもさわやかなラストにちょっぴり感動。中高生のお子さんがいる方なら、子どもに読ませ自分も読んだらコストパフォーマンスは抜群。お薦めしておきましょう。
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